病弱で生意気な美少女つぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会った―。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。第2回山本周五郎賞受賞。
「BOOK」データベースより
「TUGUMI」は何度読んでも、読んだ瞬間「海」「夏」を感じさせてくれる瑞々しい作品です。繰り返し読んで内容も十分わかっているのに、読むたびにまた新しい魅力に気づき、1行も読み飛ばせません。
登場人物
この物語の語り手の女子大生。つぐみの1歳年上のいとこ。
母の妹の嫁ぎ先の海沿いの山本旅館の離れに母と二人で住んでいたが、父とその妻の離婚が成立したので、東京で親子三人で暮らしている。
山本旅館に嫁いだ、まりあの母の妹の娘。この物語の中心人物。
生まれつき、体が弱く、入退院を繰り返してきた。長くは生きられないと医者に言われた家族はつぐみを過保護に育て、結果とてもわがままで粗野で口が悪く、粗暴な態度をとることもよくある。
一方外見はとても良く、容姿端麗で頭もいい。その美しさは地元でも有名で、モテる。
リゾートホテルの御曹司。まりあと同い年の青年。山本旅館から遠くないところに建設中の大型ホテルのオーナーの息子。
幼少期に大病を患ったことがあり、その経験談につぐみは共感を持ち、やがて2人は恋仲になる。
権五郎の飼い主。
つぐみの姉。まりあの1歳年上の女子大生。性格はつぐみと違い温和で優しく、涙もろい。
ケーキ店でアルバイトしている。
まりあの父の愛人。カラッとした性格で明るい。妹の嫁ぎ先にまりあと共に身を寄せて暮らしている。
まりあの母を愛し、山本屋旅館に通い続けた。まりあが19歳の時離婚を成立させ、まりあと母と3人で東京に住み始める。
山本屋旅館のオーナー夫婦。陽子ちゃんとつぐみの親。ペンション経営の夢を叶えるために山本屋旅館をたたむことにする。
もともとまりあが世話をしていた犬だが、まりあが東京へ行ってからはつぐみが世話をしている。
あらすじ
まりあは、母の妹が嫁いだ海沿いの山本屋旅館の離れに母と暮らしていた。
病弱ないとこのつぐみは旅館の3階の一番見晴らしのいい部屋を与えられており、子供の頃からわがままし放題だった。しかし、つぐみの観察力や、ユーモア、真剣さなどをまりあは理解しており、そんなまりあのことをつぐみも理解している。
父の離婚を機にまりあと母は東京に移り住むことになる。
ある日、つぐみから電話があり、旅館がたたまれることを知ったまりあは旅館で最後の夏を過ごすことに。
まりあとつぐみと陽子ちゃんと恭一、4人の夏が始まり、様々な出来事が巻き起こる。
その夏の終わり、つぐみの容態が悪化する。そして、つぐみの想いが綴られる。
「TUGUMI」の名言
たとえば、地球にききんが来たとするだろ?食うもんがなくなった時、あたしは平気でポチを殺して食えるような奴になりたい。もちろん、後でそっと泣いたり、みんなのためにありがとう、ごめんねと墓を作ってやったり、骨のひとかけらをペンダントにしてずっと持ってたり、そんな半端なやつのことじゃなくて、できることなら後悔も、両親の呵責もなく、本当に平然として「ポチはうまかった」と言って笑えるような奴になりたい。
『TUGUMI』吉本ばなな
あたしは、最後の一葉をいらいらしてむしりとっちまうような奴だけど、その美しさは覚えているよ。
『TUGUMI』吉本ばなな
つぐみの個性的だけどハッとさせられるような言葉が『TUGUMI』にはちりばめられています。
この本のここがすごい!
夏休み、海の街で期間限定の最後の夏が始まる。
この本を開くと、夏休みの旅館の忙しい音や、賑やかな声、夜の海の静けさ、懐かしさ、寂しさが一気に押し寄せてきます。
そんなノスタルジックな雰囲気をつぐみがいい意味で壊していく、この感じが面白いんです。
この本のすごさはこのつぐみの魅力です。
わがままで破天荒に見えるつぐみですが、実は周りのこともよく見ています。
つぐみの言葉や行動には力があります。最後の終わり方もとても気持ちよく、読んだ後、前向きな気持ちになれます。
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