人生の最後に食べたいおやつは何ですかーー若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごす事を決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。ー食べて、生きて、この世から旅立つ。全ての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。
Amazonより
本屋であらすじを読んだだけで、涙が出てきたのはこの本が初めてです。
すぐにレジに持って行きました。
以下、原作のあらすじのネタバレです。
登場人物
海野雫(うみの しずく)主人公の女性。癌を患い余命宣告をされ、ライオンの家に行く。
マドンナ ライオンの家の代表。
六花(ろっか、りっか)ライオンの家で昔に亡くなったゲストが飼っていた大型犬。
田陽地(たひち) 瀬戸内でワインを作るため、葡萄を栽培している。
狩野シマ、舞(かのしま、まい)姉妹 ライオンの家の食事担当
あらすじ①「生きている」
ライオンの家にきた雫は、毎朝出てくる美味しいお粥、美味しい空気、自由に歩き回れる自然、素材を生かした料理など、これまで生活していた都会での暮らしでは得ることができなかった生きていることを実感する毎日を過ごしている。そこで出会う人々のことが丁寧に描かれている。
ライオンの家には「おやつの時間」というものがあり、自分が今までの人生で食べたお菓子で、もう一度食べたいものをリクエストし忠実に再現してもらえるというものだ。このおやつの時間のそれぞれのゲストがリクエストするおやつにその人の思い出が詰まっている。おやつの前に、その思い出がマドンナによって読まれるのだが、その短い手紙がその人のそれまでの人生が想像できるほど奥深い。
あらすじ②「生と死の間」
雫の病状は日に日に悪くなる。その度にライオンの家のみんなが手当てをする。そんな日々の中で、雫はたびたび意識がとび、亡くなったゲストや家族と会う。その人々との会話の中に名言が散りばめられている。
「死ぬ」ということがどういうことなのか、温かい言葉で教えてくれる。そして、それまでおやつの時間にリクエストするおやつを決めきれなかった雫だが、ついに決める。その時、やっとしずくの唯一の家族、叔父さんとの思い出が語られる。
あらすじ③「死後」
「ライオンのおやつ」には、雫が亡くなる様子はほとんど描かれていない。ただ、その代わりに、雫が亡くなった後、残ったレモン島の人々や家族による雫の話が語られる。雫のために、それぞれが行動する。
この本のここがすごい!
「生死」をテーマにすると、なかなか感情移入するのは難しい作品が多いですよね。
側にいる友人や家族の視点に立ってしまって、どうしても余命宣告を受けた主人公の気持ちになれないというか。もちろん悲しい気持ちにはなるんですが。ただこの「ライオンのおやつ」は、主人公の雫が、まるで自分のように感じてしまう。なぜでしょうか。読み手が余命宣告された主人公の気持ちになるには、1冊の本ではなかなかついていけないんですよね、スピードが早すぎて。でもこの「ライオンのおやつ」の雫は、読み手と同じスピードで病を知り、病気になったことに苛立ち、それを受け入れ、自分自身のことにも向き合っていく…そのスピードに無理がなく、それなのに、ここまで丁寧に描写されているので、もはや自分の物語のように感じてしまいます。
これ以上感情移入できないほど、読んでいく中で、気持ちが入ってしまいました。雫は自分自身のことを多く語りません。でも十分にこの主人公の人間性や背景が分かるんです。それは魅力的なライオンの家の人々、家族のおかげです。そして読んだ後は、温かい気持ちで胸が一杯になりますよ!おすすめです。
「生まれることと亡くなることはある意味背中合わせですからね。どっち側からドアを開けるかの違いだけです。」
はじめましての方はこちら!
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